フィレンツェ歌劇場/ハマル/カラナス(ms)/ゲルネ(br)/ノイズム:バルトークは日・伊・洪の架け橋
2012-06-03


今回のプロダクションはサイトウ・キネン・フェスティヴァルとの共同制作で、松本のほうは昨年8月に上演済み、その直後に北京と上海でも公演したようです。フィレンツェではこの今年の五月音楽祭がプレミエで、本来は5/31の初日から全3回の公演予定でしたが、雨漏りによる劇場設備の不具合のため5/31はキャンセルとなり、結局この日の6/3が初日となりました。とことんトラブル続きの演目です。正直、客入りは悪かったです。5/31の分の観客を残りの2回にある程度振り分けていたはずですが、それでもかなり空席が目立ちました。元々の通り小澤の指揮だったら、あるいはせめて音楽監督のメータが代打を引き受けていたら、多分満員御礼だったんでしょうかねえ。小澤のキャンセルはあれど、日本人が多数出演することもあって、観客には日本人らしき姿が多かったです。


1. Bartok: The Miraculous Mandarin
Sawako Iseki (Mimi, the girl), Satoshi Nakagawa (The Mandarin)
Yoshimitsu Kushida (Kuroko of Mandarin), Aiichiro Miyagawa (Mimi's stepfather)
Izumi Fujii (Mimi's stepmother), Megumi Mashimo (Mimi's stepsister)
Takuya Fujisawa (Old man), Yukio Miyahara (Student)
Emi Aoki, Ayaka Kamei, Leonardo Jin Sumita, Valeria Scalisi,
Francesca Bellone, Giorgia Calenda, Ilaria Chiaretti, Massimo Margaria,
Rivvardo Riccio, Francesco Porcelluzzi, Angelo Perfido, Duccio Brinati (Kuroko)

このプロダクションの演出および振付けは、ノイズムという新潟のダンスカンパニーを率いる、金森穣。一人でバレエとオペラの演出を両方手がけるのは、ヨーロッパではあまり聞いたことがありません。「マンダリン」のダンサーたちはノイズムの主力メンバーに加え、劇場のバレエ団MaggioDanzaが脇を支えます。幕が開いてまず、全身黒づくめの黒子がうじゃうじゃ踊っているのには、なんじゃこれはと度肝を抜かれました。まるでBlack Eyed PeasのPVのよう。ほどなく登場する主要登場人物はちょっとひねってあって、男1人に女3人。主役の少女ミミ(井関佐和子さん、金森穣の奥さんだそう)は金髪ショートカットに筋肉質の身体を駆使して四角いちゃぶ台の上で怪しい踊りを踊っています。クラシックではなくコンテンポラリーなダンスです。取り囲む3人の悪党は、この演出では継父、継母、継姉ということになっていて、衣装が「ジパング系」とでも言うのか、デフォルメされた和風です。頭領である継父は花魁のような綿入りはんてん着てるし、海外マーケットを意識したテイストがにじみ出ています。しかしこれだけでは終らない。満を持して登場したマンダリンは、背後から黒子が操っている人形浄瑠璃を模した振付で、これはなかなかユニークなアイデアで面白かったです。練習たいへんだったでしょうね。

一見ぶっ飛んだ演出に見えますが、ストーリーはオリジナルを忠実になぞっていて、逸脱も冒険もありません。このジャパニーズテイストの必然性は、と問われると、多分答えはあまりないのでしょうが、私はけっこう楽しめました。ただ、今回主要ダンサーを全て日本から連れ来ざるをえなかったように、他のカンパニーで上演できる汎用性には多分欠けるので、日本以外で今後再演されるかどうかは微妙ですか。我が家的には、子供に見せるには教育上好ましくないシーンもありましたが、それは元々であって演出のせいではありませんね。

ハマルは今回がこの歌劇場デビューだったはずですが、こいつはオハコだぜ、とばかりに楽譜を置かず、長身をくねらせながら自分も踊りまくるというビジュアル系。音楽的にも生き生きとした躍動感に溢れ、私好みのリズムの鮮烈なバルトークでした。オケはハイレベルで集中力も高く、クラリネットのソロはもうちょっと色気が欲しいかな、とは思いましたが、ロイヤルオペラよりはよっぽどプロフェッショナルなオケに聴こえました。

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