ベルリンフィル/ラトル:マーラー3番、至福のクライマックス
2011-02-23


2011.02.23 Royal Festival Hall (London)
Sir Simon Rattle / Berliner Philharmoniker
Anke Hermann (S-1,2), Nathalie Stutzmann (A-3)
Ladies of the London Symphony Chorus
Ladies of the BBC Singers
The Choir of Eltham College
1. Brahms: Es tont ein voller Harfenklang, Op. 17 No. 1
2. Wolf: Elfenlied (Morike Lieder)
3. Mahler: Symphony No. 3

ベルリンフィル最終日です。この日ももちろんソールドアウト、リターン待ちの長い列ができていました。

今日のコンサートマスターは大進君ではなくブラウンシュタインでした。本来今日はマーラー1曲のプログラムですが、後になって短い歌曲2曲の追加が発表されました。プログラムを読んでいないのでこの選曲の意図はよくわからないですが、1曲目のブラームス初期の歌曲は、作曲がマーラーの生年である1860年ごろなんですね。2曲目の作曲者ヴォルフは言わずと知れたマーラーと同い年の人ですから、「1860年繋がり」の選曲だったのかな。歌曲は特にうとい分野なので、2曲とも聴いたことのない曲でした。

ウォーミングアップも済んだところで、休憩なしでマーラーの開始です。この3番の第1楽章は特に大好きな曲なんですが、冒頭からベルリンフィルのパワフルなホルンと打楽器に早速胸にぞぞ気が走りました。同じ「角笛」交響曲とは言え、テンポが激しく揺れ動く4番とは違ってこれは行進曲ですから、揺さぶりなく淡々と進んで行きます。今日は後ろの方の席だったんですが、音が十分な音圧を保ってしっかり届いてくれるので、やはり超一流のオケは楽器の鳴らし方からひと味違いますね。ラトルは今日はあまり仕掛けて来ないなと思っていたら、展開部のクライマックスの前で珍しく無理めのアチェレランドをかけてオケを煽り、その後の暴風雨のような音楽をうまく導いていきました。再現部になり、行進曲が戻ってきて盛り上がる部分は、私の好みでは大見得を切って「泣き」を入れて欲しいところですが、サー・サイモンは一歩引いてクールにスルーしていたのがまあ彼らしいです。これだけでお腹いっぱいになりそうなこの長大な第1楽章、案の定終った後は拍手がパラパラと鳴っていました。

第2楽章はしかし、弦の甘いメロディを実にロマンチックに響かせて、なるほどここまで「泣き」は取っておいたのだなと納得。第3楽章では中間部の舞台裏で吹くポストホルン(多分トランペットで代用)がなにげにめちゃめちゃ完璧で、さすが裏方まで一流を配置しております。

第4楽章、アルトのシュトゥッツマンが登場し、指揮者の横ではなくて打楽器の前あたりに立ちました。初めて聴く人ですが、美しい声のアルトです。バックでは第1楽章の動機が寡黙に再現される中、オーボエの強烈なポルタメントがたいへん新鮮でした。ここまでポルタメントを強調する演奏は聴いたことがありませんが、どうやら中間楽章でいろいろと仕掛けを盛り込む戦略のようです。ベルリンフィルは、繊細なところはとことん繊細に、高らかに鳴るところはとことん大胆に、ダイナミックレンジの広さはいつもながら圧巻です。

第5楽章は短い曲ですが、25名の少年合唱と100名の女声合唱が加わり、一気に賑やか、華やかになります。オケの音量が大きいからでしょうか、合唱団の人数は普通よりも多めです。面白かったのは少年合唱が要所で、ちょうど大声で遠くの人を呼ぶときのように、手でメガホンを作って歌っていたことです。確かにこの曲のライブでは少年合唱がオケに負けて今ひとつ聴こえてこないことも多いので、ビジュアル的にも少年だからこそ許されて、良いアイデアだと思いました。


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