東京・春・音楽祭:ここでしか聴けないハイレベル、「さまよえるオランダ人」
2019-04-07


このシリーズ、あらためて書くまでもないですが、オケのクオリティに加え、歌手陣が充実しているのも特長で、トータルでここまでのハイレベルは海外の有名歌劇場でもほとんどチャンスはないと思います。ターフェルのオランダ人が別格に素晴らしいのは言うまでもないとして、バイロイトでもゼンタを歌っているメルベートは、エキセントリックながらも浮つかないどっしりとした歌唱が貫禄十分。大御所ペーター・ザイフェルトは多分このシリーズ初登場で、65歳(ルチア・ポップのWidowerだからもっと歳食ってるかと思ったけど、15歳も年下の夫だったんですね)とは思えぬ伸びのある美声を披露。このトリプルスターに交じって、急病のアイン・アンガーの代役で呼ばれたノルウェー人バスのオースボーも、負けることなく堂々と渡り合っていましたので、知名度はまだまだかもしれませんが大した実力者です。主役4人が皆、体格も良く、一様に素晴らしいシンガーだったので、舵手役のイフリムは小柄さ(この人もぼっちゃり系ですけどね)と声の線細さ、不安定さが対比されてしまって気の毒でした。ただ、この役はこのくらい「若い」ほうがむしろ良いかもしれません。マリー役は、うーむ、ほとんど印象に残っていない…。

ビデオは、CGがどうしてもゲームっぽい感じになってしまうので最初は抵抗があったのですが、今回の「オランダ人」は奇をてらわず、ストーリーを分かりやすくトレースしていて、ただでさえ長ったらしいワーグナーのオペラをコンサート形式で鑑賞するにはこれもアリかなと、今は肯定派に傾いています。前にロンドンで観たときのシンボリックな演出よりはよっぽどいい。あと、今回あらためて思いましたが、登場人物がみんな自分勝手な人たちばかりで、最後の昇天のシーンも鼻白むというか、共感できるところがほとんどない寓話だなと。

さて来年は何が来るか、いつ発表になるのか知りませんが、初期の作品を除くともう残すは「トリスタンとイゾルデ」しかないので、それを有終の美として、このワーグナーシリーズもフィナーレ、となるのでしょうか。どんな歌手を揃えるのか、来年も期待大ですね。

気がつけば昨年は演奏会に行く数が激減していて、今年も目ぼしいものがまだ見つけられていないので、さらに激減する予感が…。ブログの更新もこんな感じになりそうです。

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