LSO/ゲルギエフ/チャン(vn):アドレナリンVnと、意外と正統派の「悲愴」
2012-02-23


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2012.02.23 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Sarah Chang (Vn-2)
1. Britten: Four Sea Interludes from ‘Peter Grimes’
2. Shostakovich: Violin Concerto No. 1
3. Tchaikovsky: Symphony No. 6 (‘Pathetique’)

昨シーズンから続いたゲルギー/LSOのチャイコフスキーシリーズもこれで最終です。「4つの海の前奏曲」は出だしこそちょっと乱れたものの、後はさすがの緻密なアンサンブルを聴かせてくれました。無国籍・モダン・明朗快活というオケのキャラクターは先日のNYPとだいぶ共通点がありますが、LSOは音がでかいのが魅力です。

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韓国系アメリカ人の人気若手ヴァイオリニスト、サラ・チャンを見るのは初めてです。キラキラブルーの派手な胸開きドレスでオペラ歌手のようにふっくらとした人がヴァイオリンを持って入ってきたので、あれっ、独奏者が変更になったのかなと一瞬疑いました。プロモーションで使われていたジャケット写真(上)と比べたらtotally differentと言わざるを得ない(笑)。興に乗ってくると大きく仰け反ったり、空間をキックしつつ前後に動いたり、演奏のほうも見かけ通り派手でした。音は非常にしっかりしており、繊細さや際立った個性は今ひとつ感じなかったのも事実ですが、終楽章のスポーティな超高速パッセージをアドレナリン噴出しながら弾き切ったのは一見の価値ありでした。サラ・チャンの名前はよく聞いていたものの今まで特に聴きに行かなかったのは、しょせん韓流アイドル系かと実はちょっとナメていたからなんですが、これは是非かぶりつきで聴くべきだったと後悔しました。

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終演後、サイン会をやってたサラ・チャン。スタッフがしっかりしているのか、今日は地階、1階の両方で珍しくCDの即売会もやってました。

昨シーズン、ゲルギーのチャイコは結局一つも聴けなかったのですが、4番、5番、この「悲愴」と、後期3大交響曲は何とか全部聴けました。ここまでは極めて個性的な「俺のチャイコ」を聴かせてくれたゲルギーさんですが、この「悲愴」は曲自体が破天荒な分、今までで一番普通の演奏に聴こえました。ナイジェルさんの「ティンパニ自由自在」も、4番、5番と比べたら非常に控えめな音程変更でした。細かいところで型破りなギミックをいろいろ入れても、曲にすっと馴染み溶け込んでしまうんですね。晩年のバーンスタインみたいに唯我独尊の「悲愴」もちょっと期待したんですが、意外と「正統派」な演奏でした。今日はクラリネット、オーボエ、ファゴット、フルート各々の木管の音色が非常に素晴らしかったです。金管は逆に咆哮せず、必要にして十分な音量で節度ある「嗚咽」が表現されていました。NYPも技術の高いオケでしたが、やっぱりLSOも余裕で上手かったです。あー何と幸せな日々よのお。

[オーケストラ]
[ロンドン交響楽団]

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