LPO/N.ヤルヴィ/ギルトバーグ(p):My Lonely Valentine
2012-02-14


禺画像]

2012.02.14 Royal Festival Hall (London)
Neeme Jarvi / London Philharmonic Orchestra
Boris Giltburg (P-1)
1. Rachmaninov: Piano Concerto No. 2
2. Kreisler (arr. Rachmaninov, orch. Leytush): Liebesleid (European premiere)
3. Rachmaninov: Symphony No. 2

妻娘が揃って風邪でダウン、おっさん一人で「バレンタインコンサート」に行くことになってしまいました。このベタベタにロマンチックな選曲、やはり客層は若い人、いかにも普段演奏会には行かなさそうな人が多かったです。楽章が終わるごとに拍手する人々、演奏中にカツカツとハイヒールの音を立てつつ外に出て行く女性、演奏中にボリボリ物を食べるガキなど…。

1曲目は超メジャーなピアノ協奏曲第2番、ライブで聴くのはすごく久しぶりです。6年前聴いたときのソリスト、ラン・ランは今週末バービカンにやってきますが、それはさておき。ボリス・ギルトバーグは今年28歳になるユダヤ系ロシア人の若手ピアニスト。昨年のチャイコフスキーコンクールに出たもののラウンド2に残れなかったようです。風邪でもひいているのか、右の鼻穴にティッシュを詰めて出てきました。別段どうということはないピアノだったので、論評に困ります。どうも音があまり澄んでない(はっきり言うと濁っている)ように聴こえるのは、ピアノの調律のせいかもしれないし、私の耳がおかしいのかもしれませんが、よく観察していると細かいミスタッチが多く、しかも後半になるほど増えていってました。まあ、本当に体調は悪かったのかも。ヤルヴィお父ちゃんは初めて聴きますが、巨匠の風格溢れる体格の通り、低音を効かせて堂々とした進行です。ニュアンスというものは薄く、その代わりに弦の音は磨き上げられ、弦と木管のハーモニーが実に美しく溶け合っていました。こういうのは厳格なリハーサルとベテランのワザがあってこその結果ですよね。ただし、一番重要なはずのクラリネットは、音は綺麗なんですが木で鼻をくくったような何とも味のないソロで、私は感心しませんでした。

1楽章が終わったところで大量のレイトカマーを入れたため、この人達がどやどやといつまでも騒々しく、ヤルヴィもいったん指揮を始めようとしたもののあまりにうるさくて断念し、結局ノイズが収まるまで長い時間仏頂面で待っていました。せっかくのテンションに水を注されたかっこうで、これは会場のマネージメントが悪いです。

続くクライスラーの「愛の悲しみ」は、欧州初演というふれこみでプログラムにクレジットされていたものの、これは本来ならアンコールという取り扱いですよね。拍手がほとんど消えかかっていたにもかかわらず、ボリス君はもう1曲アンコールで子犬のワルツのようなコロコロとした小曲(曲名不明)を弾いてくれました。こういう軽めのアルペジオな曲のほうがこの人の本来の持ち味が生きるように思いました。

メインのラフマニノフ第2番はここ数年マイブームなので、実演の機会があればできるだけ聴きに行ってます。ここでもヤルヴィはすっきりと見通し良く音を整理しながら、ストレート、質実剛健に歩んで行きます。LPOはいつになく上手いし、リタルダンドやポルタメントはきっちりやってますが、情緒こもったロマンチックにはなり切れない歯がゆさがありました。あまりスケール感はなく、意外と小さくまとまっている印象です。1楽章ラストのティンパニの一撃は無し。ヤルヴィは打楽器奏者出身なのでガツンとやってくれるかと期待したのですが。


続きを読む

[オーケストラ]
[ロンドン・フィルハーモニー]

コメント(全6件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット