フィルハーモニア管/マゼール:マーラーシリーズ最終回は「四百人の交響曲」
2011-10-09


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2011.10.09 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Sally Matthews (S), Ailish Tynan (S), Sarah Tynan (S), Sarah Connolly (Ms)
Anne-Marie Owens (Ms), Stefan Vinke (T), Mark Stone (Br), Stephen Gadd (Br)
Philharmonia Chorus, Philharmonia Voices, BBC Symphony Chorus
Boys from the Chapel Choirs of Eton College
1. Mahler: Symphony No. 8 (Symphony of a Thousand)

「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行くつもりが結局全部聴いてしまった」シリーズもついに最終回。前日のロイヤルバレエに続き連チャンで家族揃って出かけました。さすがに娘はお疲れ気味、マーラーにさして興味があるわけではもちろんないので、しょうがないからつき合ってあげるよモード。彼女が、ヨーロッパで自分が聴いてきたものの値打ちを認識するのは、もっと後のことになるのでしょう。

本日の「千人の交響曲」、メンバー表から人数を数えてみると、オケ121、ソプラノ75、アルト59、テナー46、バス59、少年合唱34、独唱8、指揮者1の総勢403名でした。ちょうど、Loon Fungで800gの豆腐パックを買って家で実際測ってみたら400gしかなかった(ほぼ実話)、みたいな感じでしょうか。冗談はさておき、この曲を昨年のプロムス2007年にブダペストで聴いた時はどちらも600人くらいだったので、それと比べてもずいぶんと少数精鋭ですが、響きの良いコンサートホールなので音量的にはこれで十分おつりが来るくらいです。

このシリーズを一貫してマゼールは遅めのテンポ設定で、チラシには演奏時間約80分と書いてありましたが、今日も実際には100分近くかかっておりました。第一部は冒頭からオルガンと合唱がまさに風圧が顔を直撃する迫力で、場内に上昇気流が巻き上がっているんじゃないかと思うほどの空気のうねりを感じました。今回は早めにF列のチケットを取ったので、この距離だと少年が合唱もよく聴こえ、圧倒的な音量の中にただただ漂っておりました。音の洪水とは言ってもロイヤルアルバートホールのひどい音響と比べると音の分離は至ってクリア、オケの緻密なアンサンブルも十分に楽しめました。やっぱりちゃんとしたホールで聴く良質の大管弦楽は、格別に快感を刺激します。

力技で押し切った第一部から一転、第二部は繊細過ぎる弦から始まって精緻の極みの音楽が続きます。第一部では海に飲み込まれるしかなかった独唱陣も、各々待ってましたと見せ場を作ります。特にテナーのフィンケは先日の「大地の歌」では正直がっかりしましたが、どうにか調子を取り戻したようでしっかり声は出ていました。依然として一本調子で、好きにはなれない歌い手ですが。舞台上のソプラノ2人とメゾのコノリー、バリトンのストーンも各々前に出る歌唱で良かったですが、もう一人のメゾのオーウェンスと、急きょ代役で呼ばれたバリトンのスティーヴ・ガッド(カリスマドラマーとはもちろん別人ですね)は、ちょっと影が薄く印象に残りませんでした。歌の部分は各歌手の力量にまかせつつ、マゼール御大は今まで以上に広過ぎるダイナミックレンジで濃厚にえげつない表現を繰り広げ、変態指揮者の面目躍如でした。指揮棒を腰のあたりに構えて真横に突き刺すような仕草も相変わらずチャーミング。


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