ロイヤルバレエ:トリプルビル(ライメン/マルグリットとアルマン/レクイエム)
2011-10-08


2011.10.08 Royal Opera House (London)
Barry Wordsworth / Orchestra of the Royal Opera House

本日はトリプルビルの初日。マチネもありましたが、カルロス・アコスタをまだ見たことがなかったので、彼が出るソアレのほうを取りました。

1. Limen (Kaija Saariaho: Cello Concerto "Notes on Light")
Wayne McGregor (Choreography), Tatsuo Miyajima (Set and Video Designs)
Anssi Karttunen (Solo Cello)
Leanne Benjamin, Yuhui Choe, Olivia Cowley, Melissa Hamilton
Sarah Lamb, Marianela Nunez, Letica Stock, Fumi Kaneko
Tristan Dyer, Paul Kay, Ryoichi Hirano, Steven McRae
Fernando Montano, Eric Underwood, Edward Watson

1つ目はフィンランドの作曲家サーリアホのチェロ協奏曲に合わせて、ロイヤルバレエの常任振付師ウェイン・マクレガーが振りを付けたモダンダンス。幕が開くと半透明のスクリーンにデジタル数字がうねうね動く映像が投影され、奥では闇からダンサーが浮かび上がってくねくねとよくわからないダンスを踊ります。サーリアホという作曲家は初めて聴きますが、調べると女性なんですね。初期は電子楽器を多用した作品が多かったものの、徐々にクラシカルで解りやすい作風に転じていったとのことで、2007年作曲のこの曲は確かに現代音楽と入っても技巧に縛られた窮屈なものではなく、北欧の厳しい大自然に通じるようなおおらかさを持っています。とは言え決して聴きやすい曲ではなく、舞台の上で繰り広げられる極めてフィジカルなダンスも私には肉体の限界を見極める連続実験のように見えてしまい、モダンダンスはやっぱりわからんなあ、という印象だけが残ってあえなく討ち死に。

この蒼々たるメンバーに交じって見慣れない日本人の名前が。今年ロイヤルバレエに入団したばかりの金子扶生さんという人で、女性らしからぬ長身でボーイッシュな体格がたいへん舞台映えしていました。まだ高校を出たてくらいの年齢のようですが、若いのにそのがっしりと線の太いダンスは大物を予感させました。今後が楽しみな人ですね。

禺画像]


2. Marguerite and Armand (Liszt: Piano Sonata in B minor)
Frederick Ashton (Choreography), Dudley Simpson (Orchestration)
Robert Clark (Solo Piano)
Tamara Rojo (Marguerite), Sergei Polunin (Armand)
Christopher Saunders (Armand's Father), Gary Avis (Duke)

次はエースのタマラ・ロホ登場。ROH歴2年にして実は初めて見ます。バレエは妻の好みでいつもマクレーさんの出る日を選ぶので、なかなか巡り合わせがありませんでした。

このバレエはフォンテインとヌレエフの黄金コンビのために1963年に作られたフレデリック・アシュトンの代表作で、音楽はリストのロ短調ピアノソナタをオーケストラ伴奏付きに編曲したもの。プロットはデュマの「椿姫」で、30分程度に圧縮されていますので、「ラ・トラヴィアータ」のダイジェストを早送り再生で見ているような感覚でした。ロホはカーテンコールで並ぶと意外と小柄なので驚きましたが、手足が長いんでしょうか、踊っている間はブレのないダイナミックな動きもあってか、ポルーニンと並んでも小柄と言う感じは全くしませんでした。ふっくらとした頬と黒髪のエキゾチックな美貌のおかげで、実年齢よりずっと若く見えますね。早変わりで着替えていった赤・黒・白の衣装も各々よく似合っていて(美人は得だなあ)、このバレエが彼女のために作られたと言われても信じたでしょう。フォンテインとヌレエフは19歳の「年の差ペア」ですが、ロホとポルーニンの年齢差も15歳あり、伝説のペアとイメージが重なります。ロホは鬼気迫る感情移入でこの悲劇を表現し切っていたと感じましたが、もう一つのめり込んで見れなかったのは、ひとえに演奏にキレがなかったせいです。管弦楽にも協奏曲にもなりきれない中途半端なアレンジに加え、やる気のないオケはピアノの邪魔にしかなっていません。リストは元々好きでもないので、なおさらげんなりしました。

禺画像]

続きを読む

[バレエ]
[ロイヤル・オペラ・ハウス]

コメント(全2件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット