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2011.02.10 Barbican Hall (London)
Daniel Harding / London Symphony Orchestra
Helene Grimaud (P-2), Sam West (Narrator-3)
1. Strauss: Don Juan
2. Ravel: Piano Concerto in G
3. Richard Strauss: Also Sprach Zarathustra
ハーディング/LSOは新婚旅行の最中バービカンで聴きましたが、10年以上経って今度は娘連れで聴きにくることがあろうとは、当時はもちろん夢にも思っていませんでした。妻は、ハーディングは年を取った、髪も薄くなったと言いますが、私はそんなに変わってないように思えます。元々とっつぁん坊や系の顔なので、若そうに見えて実は最初からちょっと老け顔入っていたし。
昔と相当変わったのは、ズバリ「余裕」です。超一流どころの場数を踏み、すっかり人気指揮者の仲間入りをした今では、モーツァルトでもR.シュトラウスでも何でも汗びっしょりに必死で腕を振りまくっていた昔と比べ、必死さが消え超然とした風格がにじみ出ています。振りが大げさなのは変わりませんが、過不足ない力み方で効率よくオケをコントロールし、最大限の音を引き出すのが非常に巧みになったなあと感じます。ハーディングが振るときのLSOはとにかく音がよく鳴っています。というわけで、1曲目のドンファンから、多少のアンサンブルの乱れはありましたが、大音響でガンガン鳴り響いてはピタリと止まる、小気味のいい演奏を聴かせてくれました。この曲にそれ以上の何がありましょうか(決してネガティブな意図はありません)。
次のラヴェルのピアノ協奏曲は、当初モーツァルトの23番と発表されていたものの、2ヶ月前にソリストの希望という理由で曲目変更がアナウンスされました。あれ、グリモーは確か昨シーズンにもこの曲でLSOに登場したはず。彼女にとっては新曲へのチャレンジだったのでしょうが(ラヴェルよりもモーツァルトのほうが新曲というのも珍しい話です)、結局練習する時間が取れなかったんでしょうかね。グリモーを聴くのは6年ぶりくらいですが、前回も直前になってブラームスの2番からシューマンに曲目が変更になり、この人は常習犯かもしれませんね。ともあれ昨シーズンのグリモーは聴いてないし、モーツァルトよりラヴェルのコンチェルトのほうが圧倒的に好きな曲なので、私にはたいへんラッキーな曲目変更でした。
さてグリモー、相変わらずスタイルの良い美人です。前回はその華奢な風貌からは想像できない、男勝りにアタックの強い骨太の演奏に驚きましたが、今回はラヴェルなので多少は力が抜けて軽やかさが出ていました。タッチは相変わらず鋭いですが、音の粒が奇麗に立っていて、ごまかしがなく、指がよく回ること回ること。掛け値なしに技術は非常に上手いです。ハイレベルのラヴェルだったと思いますが、ただしフランスっぽい柔らかさはありません。グリモーはフランス人のくせにフランスものはあまり得意じゃなさそうで、このラヴェルなんか、彼女としては異色のレパートリーなんじゃないでしょうか。それはオケも同様で、もちろん演奏技術は極めてハイレベルですが、シャレた軽さやジャジーな雰囲気はあまり出ていませんでした。あと気になったのは、グリモーが時々発する、地獄の底からうめき声が響いてくるような何とも言えぬ鼻息です。相当の肺活量と、多分あまり状態のよろしくない副鼻腔炎から来ているんじゃないかと想像しますが、おかげで、せっかくほどよく知的で叙情的なピアノで「こんなのも弾けるようになったんだ」と感心した第2楽章も、鼻息のせいで興ざめというか、ちょっとハラハラしました。
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