2025.04.26 NHKホール (東京)
Fabio Luisi / NHK交響楽団
東京オペラシンガーズ, NHK東京児童合唱団
Olesya Petrova (mezzo-soprano)
1. マーラー: 交響曲第3番ニ短調
本日の演目は、来月アントワープ、アムステルダム、ウィーン、プラハ、ドレスデン、インスブルックを回る欧州ツアーのAプログラムだそうです。日程を見るとこの曲をやるのはアムステルダムの1日だけのようですが、大規模なうえに、合唱団、児童合唱も調達しなければならないので、そうそうどこでもできるわけではないんでしょう。
にわか雨も上がり、NHKホールは当日券なしの満員御礼。コンマスは読響から移ったばかりの長原幸太氏です。第1楽章、9人揃えたホルンのユニゾンは気合い十分で力強く、その後も高い集中力でキビキビと進みます。全体的に見ても管楽器が途中でヘロヘロになるようなことはなく、特に、身体が温まってきた再現部のホルンはさらに素晴らしかったです。やはりルイージはこのような大オーケストラの交通整理が非常に上手いと感心しました。クサいベルカント風は抑え気味に、スタイリッシュかつ躍動感を際立ててまとめていきます。この圧巻の第1楽章は、欧州の口うるさい聴衆にも十分通用すると思いました。
第2楽章の前に女性コーラスと児童合唱団が登壇。人数はそれぞれ50人、40人くらいでしょうか。楽器メンバーにとっては第2〓第4の中間楽章は小休止という意味合いもあるのでしょうが、第2楽章はともかく、第3楽章まで来るとちらほらほころびが出てきて、「弱音の弱さ」が見えるようになりました。メゾソプラノが入る第4楽章は特に管楽器が雑になってきたうえ、ロシア人メゾのペトロヴァ自身、調子がイマイチで声が安定せず。オーボエのポルタメントもほとんどかからず、あっさりとした味付けです。
それでも第5楽章はコーラスがたいへん良かったです。オケとのバランスもちょうど良い感じの人数(声量)で、やはりルイージさんのバランスコントロールは素晴らしいものがあります。エピローグのような第6楽章は、休養十分な金管楽器を中心に、再び大音響のパワープレイに持って行きます。最後良ければ全て良し、この長丁場を耐えた甲斐がある盛り上がりでした。ダブルティンパニのユニゾンが、ずれないように奏者が必死で目配せしていたのが微笑ましかったです。
第1楽章は非常に素晴らしい出来でしたし、全体的にも良い演奏で、10年ぶりに生で聴いた甲斐がありました。ただ、欧州に出て行ってガチ勝負するとなると、ようやく準々決勝に残った、くらいのランキングが妥当なところでしょうか。
カーテンコールで、第3楽章の舞台裏のポストホルンではたいへん素晴らしい仕事をしたトランペット奏者がやんやの喝采をもらっていましたが、同じくバンダでがんばった小太鼓奏者にも日の目を当てて欲しかったなあと。
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