異次元の凄さ、テツラフ/メッツマッハー/新日本フィル
2023-03-04


この曲は名人芸をひけらかす曲ではないものの、相当な難曲であることは奏者ではない私にも想像できます。暗譜で弾き切るだけでも凄いと思いますが、12音技法の曲ながらも、全編通しての表現力がとてつもなく素晴らしい。何度も同じ感想を書いているのですが、この人は全て自分の呼吸、自分の語り口として寸分の隙もなく表現できる技術を持っています。プロならば誰でも持っているではないか、と言われればそうかもしれませんが、テツラフのプロフェッショナルは何回聴いても次元が違います。繊細さと野太さが高いレベルで同化していると言うんでしょうか、適当な表現がちょっと見つからないですが、いつもは聴き流してしまうことが多いベルクのコンチェルトがこれだけ説得力を持って身体に入ってくるのは初めての体験でした。


アンコールはバッハの無伴奏ソナタ第3番のラルゴ。これもきめ細かく肌から染み入るような名演でした。このとき、弦楽奏者が皆、今日イチで幸せそうな顔をしてテツラフの音色に聴き入っていたのが印象的でした。


テツラフがあまりに凄かったので、メインの「ペレアスとメリザンド」は、正直なところ消化試合のように抜け殻になっていました。12音技法になる前の後期ロマン派楽曲であり、普段はほとんど聴くことのない曲でしたが、指揮者もオケも十分身体が温まり、切れ目なしの長丁場を集中力持って鳴らし切っていたと思います。


しかし、思い返してもテツラフしか頭に浮かばない、そんな至福の一日でした。


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[新日本フィルハーモニー]

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