フィリップ・グラス75歳記念演奏会:コヤニスカッツィ
2012-12-14


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2012.12.14 Barbican Hall (London)
Philip Glass at 75: Koyaanisqatsi
Michael Reisman / Britten Sinfonia
Godfrey Reggio (director), Jeremy Birchall (bass)
Philip Glass Ensemble
Trinity Laban Chamber Choir
Stephen Jackson choir director
1. Phillip Glass: Koyaanisqatsi (1982) (Live film screening)

昨年のスティーヴ・ライヒに続き、今年はフィリップ・グラスの75歳記念イベントがバービカンで企画されました。ミニマルミュージックの両雄も、相次いで「後期高齢者」になられたわけですなー。フィリップ・グラスというと私の思い出は、高校生のころ「SONY MUSIC TV」という洋楽(一部邦楽も)ビデオクリップをひたすら流すという深夜番組が始まりまして、毎週欠かさず見ていたのですが、そこでフィリップ・グラス・アンサンブルのインスト曲(曲名忘れました)のビデオを見たのが初めての出会いでした。従って当時はクラフトワークかYMOみたいなテクノポップバンドの一種かなあと思っていて、グラスの本職は現代音楽の作曲家ということを知るのはもっと後になってからでした。しかしそれ以降特に追いかけたわけではないので、CD含めグラスの曲は、「あんな感じの曲」というイメージは頭の中にあるものの、ちゃんと通しで聴いたことがありません。

今日のコンサートは、1982年にグラスが音楽を付けたドキュメンタリー映画「コヤニスカッツィ/平衡を失った世界」を、ブリテン・シンフォニアとフィリップ・グラス・アンサンブルの生演奏をバックに上映するという趣向です。私は初めて知ったのですがこの映画、そこそこ有名なカルトムービーらしい。チケットは早々にソールドアウト、普段の演奏会とは客層が違う感じでした。映画の内容は、台詞・ナレーションは一切なしでアメリカの大自然や都会の風景をグラスの音楽に乗せて約1時間半の間延々と見せていくだけです。もちろん超簡単に言えばそうなのですが、最初砂漠や峡谷の雄大な自然風景から始まって、農業や鉱業といった人間の営みが徐々に見えてきて、後半は大都市の喧騒を猛スピードの早回し映像で強調し、最後は衛星ロケットの空中爆発(よく似ているので一瞬スペースシャトル・チャレンジャーの映像だと私も思いましたが、よく考えたらこの映画はチャレンジャー事故より前なのでした)からエンジンが焼けながら落下していく様子を黙々と追いかける映像で締めくくる、といういかにも含みを持った構成。作品の意味は見る人に委ねられているとは言え、テクノロジー批判の匂いは多分誰もが感じることでしょう。

極めて大雑把に言えば、リズム反復中心のライヒに対比して、グラスの音楽はアルペッジョのスケール反復(リズムは六連)というイメージです。和声と旋律的には全くの調性音楽なので耳にも脳にも優しい。最初のほうのスローな曲調に雄大な自然がゆったりと流れる映像は、あらがい難く眠気を誘いました。一方で終盤の低速撮影フィルムの早回しによるめちゃくちゃせわしない大都市文明の映像は、これまた頭がぼーっとしてくるトランス効果があり、どうしても視覚と聴覚両方からどっぷりと絡めとられてしまった様子です。ミニマル系を一歩引いて聴くというのはなかなかに難しい。映画としては、もちろん音楽も含めて、何だか病みつきになりそうな危険を感じました。冒頭と最後でバスが「こ〓や〓に〓す〓か〓ち〓」と、お経をつぶやくように単音で低く歌うのがいつまでも耳に残ります。この映画には「ポワカッツィ(1988)」「ナコイカッツィ(2002)」という続編もあって、合わせて「カッツィ三部作」と呼ばれるそうで、こうなったら他の二つも全部見てみます。

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