LSO/ガーディナー:魂の抜けた「第九」は宇宙人のシワザ?
2011-12-15


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2011.12.15 Barbican Hall (London)
Sir John Eliot Gardiner / London Symphony Orchestra
Rebecca Evans (S-2), Wilke te Brummelstroete (Ms-2)
Michael Spyres (T-2), Vuyani Mlinde (Bs-2)
Monteverdi Choir
1. Beethoven: Symphony No. 1
2. Beethoven: Symphony No. 9 (‘Choral’)

去年の2月ですからほぼ2年近く前に、テナーを除き全く同じ取り合わせの演奏会を聴いています。選曲まで全く同じなので、どうしようかと思ったのですが、せっかく12月に「第九」をやるのだから、日本人的にはやっぱり聴いておこうと。前回は高速テンポの中でも透明ながらも芳醇という一見背反する特質がちゃんと同居していたので、さすがはLSO世界の超一流、と感心したものでした。コーラスも少人数で十分な声量と完璧なアンサンブル、日本ではめったに聴けないであろう少数精鋭の「第九」でした。

しかしながら今回は、ずいぶんと贅肉がつき、魂のない演奏になっていたのでがっかりしました。ピリオド系演奏であることは変わりがなく、基本ノンビブラートの弦に速いテンポで突き進みますが、上辺だけ取り繕ってがちゃがちゃ弾いている印象が拭えず、前のようにきっちり丁寧に積み上げたところがなくなっていました。ピッコロは他の木管から離れてトランペットの隣りで、しかも立って演奏していましたが、ぴーぴーとうるさく、何もそこまで強調せんでもと。弦は気が抜けていて、木管はうるさく、金管は音が濁ったうえに雑、演奏しているのはいつものLSOの人々に見えますが、人知れず侵略してきた宇宙人が成り済ましているんじゃないかと思ってしまったくらいでした。そんな中でもいつもの質を保っていたのは打楽器パート。ティンパニは前回同様硬質のバチで鋭いアクセントをつけ、第1番ではバロックティンパニ2台、第9番はモダンティンパニ4台と使い分けながらも、さすがにチャイコフスキーのときのような勝手な音程変更は一切なく、黙々と仕事をこなしていました。オケがピリッとしないのはコーラスにも伝染し、前聴いたようなドライな清涼感はなく、ハーモニーに濁りが目立ちました。あまりにもおかしいなと思ってメンバー表を2年前のと見比べてみたら、コーラスは半分近くが入れ替わっているんですね。さらには独唱もパッとせず、特にソプラノ、バリトンはよれよれでした。

この演奏会はいったい何だったのでしょう。前日忘年会でもやって皆さん二日酔いなんですかね。どこをとってもあからさまにリハ不足に見えました。聴いた席も前回とほぼ同じあたりですので、席のせいではないでしょう。最初、今シーズンのプログラムでこの演奏会を見つけたとき、何も全く同じ選曲でやらなくてもよいものをと思ったのですが、日程的にリハの時間が取れないことがあらかじめわかっていたのであえて同じ曲にしたのか、と考えればいろいろと腑に落ちます。2シーズンぶりとは言え同じメンバーで前にもやったのだから、とナメてかかっていたのがこの報いです。LSOはたまにこういうのがあるからなー。後になって一歩引いて思い起こせば、そこまでひどい演奏でもなかったのかもしれませんが、こちらは2年前と同様の感動を期待していた落差がありましたので、辛い評価しか出てきません。それとも、こちらの耳が肥えてしまったのかな…。

[オーケストラ]
[ロンドン交響楽団]

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