LSO/ゲルギエフ/フレイレ(p):劇場型チャイコフスキー
2011-09-25


2011.09.25 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Nelson Freire (P-1)
1. Brahms: Piano Concerto No. 2
2. Tchaikovsky: Symphony No. 4

オーケストラのシーズンもいよいよ本格的に開幕です。LSOは昨年のシチェドリンと「展覧会の絵」という派手なオープニングプログラムと比べて、今年はずいぶん渋いと言うか、スタンダードにシンフォニックな取り合わせで攻めてきました。

1曲目は最初ピアノ協奏曲第1番とアナウンスされていたのですが、最近になって「ソリストの好みにより」2番に変更されていました。私はどちらもあまり聴かないし、正直どちらでもよかったのですが、1番は昨年ポリーニで聴いているので、この変更はウェルカムでした。しかし、フレイレを聴くのは初めてでしたが、何だか杓子定規の普通の演奏で、取り立ててひきつけるものがありませんでした。多分玄人好みの人なんでしょう、残念ながら私にはどこをポイントに耳をかたむければよいのか、よくわからず。一方オケはのっけから分厚い響きで地を這うようにホールを駆け巡り、重心の低い重めの演奏でした。重厚とはいえドイツ風という感じはしなくて、もっと乾いた北の大地のような響きです。第3楽章のチェロのソロは「これはチェロコンチェルトだっけ?」と思うほど、艶やかで官能的な一流ソリストの音でした。ここまでピアノはずっと食われっぱなしです。終楽章になると突如協奏曲らしい軽さが前面に出て、ようやくピアノに活力が宿ってきましたが、それまでの粘りが嘘のようにさらさらと終わってしまい、うーむ、こんなもんかな。そもそも、曲自体が尻すぼみという印象をぬぐえません。フレイレはラヴェルとか、もっと軽めの曲で聴いてみたいです。

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フレイレ氏のすぐ右に見えるのがチェロのティム・ヒューさん。

メインのチャイ4は、昨シーズンから続いているゲルギー/LSOのチャイコフスキーシリーズ後半戦の初戦になります。前半戦の1〓3番を結局一つも聴けなかったので、さてゲルギーのチャイコフスキーはどんなもんかのう、と期待半ばで聴いたのですが、予想以上に面白い演奏でたいへん楽しめました。第1楽章はゆったりとしたテンポで始まり、マーラーのようにこまめにゆらし、操りながら造形を掘り出していきます。劇的ですがかなりゴツゴツして個性的なチャイコフスキー。第2楽章もさらっと流さず、木管の呼吸をあえて他とずらしてギクシャクとした進行にし、聞き手の心をその場に留めます。ちゃんと計算ずくで組み立てていましたね、これは。だいたい、指揮台の前に一応スコアは置いてありましたが、表紙が上になったままゲルギーは結局一度も触らず。


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