2011 BBC PROMS 72:フィラデルフィア管/デュトワ/ヤンセン(vn):華麗なる魔術師サウンド
2011-09-08


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2011.09.08 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2011 PROM 72
Charles Dutoit / Philadelphia Orchestra
Janine Jansen (Vn-2)
1. Sibelius: Finlandia
2. Tchaikovsky: Violin Concerto
3. Rachmaninov: Symphonic Dances
4. Ravel: La valse

私もけっこういろんなオケを聴いてきましたが、フィラデルフィア管は自分にとって「まだ見ぬ強豪」の筆頭でした。プロムスは毎年世界中から一流の楽団が客演しに来るお祭りですので(チケットは決して安いとは言えませんが)、私のようにコレクター気質で広く浅く聴き漁るタイプのリスナーには重宝です。そのプロムスも今年はこれが最後のチケット。開場前にアルバート記念碑の前でばったり会ったかんとくさんと、我々駐在員はしょせんそのうち日本に帰る運命、これが生涯のプロムス見納めかもなどと話しつつ、しみじみとしてしまいました。

フィラデルフィア管はまずざっと見て、アジア系団員の多さが目に付きました。コンマスを筆頭に各パートのトップもアジア人率が高い。男女比は男性中心、年齢は若くもなく年寄りでもなく、中年〓壮年の層が厚い感じでした。そう言えば、今年4月に破産法の適用になったとのニュースがあり、演奏会ツアーのキャンセルなどをちょっと心配していたのですが、見たところそんな事情は全く匂わせず、いたって普通でした。

1曲目の「フィンランディア」は、部活のオーケストラで初めて出番をもらい(トライアングルと大太鼓ですが)舞台に立った記念すべき曲で、後年再び演奏した際には美味しいティンパニも叩きました。練習でいやになるほど繰り返し聴きこんでいますので、初めて聴くオケの力量を推し量るにちょうどよい曲ではあります。重く冷徹に始まったブラスは想像よりも硬質でモノクロームな音で、かつて「華麗なるフィラデルフィアサウンド」と賞賛された派手派手なイメージとはちょっと違いました。デュトワも「音の魔術師」との異名を欲しいままにする仕事人ですが、このコンビでは指揮者が完全にオケを掌握しコントロールしている印象です。金管はちょっと抑え目で、木管と弦の質が非常に高いのがヨーロッパ的バランス。冒頭はとことん粘って重くしておきながら、中間部の有名なメロディを軽くさらりと流してしまうのも、何となくフランス的エスプリに思えました。ティンパニは叩き方がスマートではなく個性的ですが、音は非常にしっかりしてオケの引き締め役になっていました。

続いてチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。初めて見るヤンセンはプロモーション用の華奢美人の写真とはだいぶイメージが違い、大柄長身の姐御肌な女性。お腹周りや二の腕にちょっとお肉も付いてきた感じですが、今でも美人には違いないのだから、写真をそろそろ成熟した大人の色気バージョンに変えてはどうでしょうか、って大きなお世話か。軽口はともかく、その大柄な外見とはうらはらに、極めて繊細に整えられたヴァイオリンでした。透き通る高音は一筋の曇りもなく、速いパッセージは淀みなくメカニカルに駆け抜け、スタイリッシュに洗練されています。しかしまあ、このホールのサークル席だと舞台との距離はいかんともしがたく、ヴァイオリンの音も耳に届く間にだいぶ痩せてしまっているのはしょうがないので、本当はかぶりつきで聴きたかったところです。あの体格と弾き方から見るに、出ている生音はもっと力強いものだったに違いない。アンコールはバッハのパルティータ第2番から「サラバンド」。あまりにアクロバティックな曲より、こういったしっとり系のほうが本来の持ち味かなと感じました。

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拍手に応えるヤンセン。存在感あります。


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