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5. 「交代する三度」第2巻11
6. 「雪の上の足跡」第1巻6(ピアノ)
7. 「夕べの大気に漂う音と香り」第1巻4
ラプソディよりさらにストーリー性のない、抽象画を見ているような雰囲気。遠くから見ていると誰が誰だかよくわからない。せっかくヌニェスがでているのに、彼女の踊りがほとんど見えません(泣)。全体的には普通のクラシックバレエとは異質な、もっとフィジカルに訴えるような踊りでした。受粉をイメージさせ、セクシャルな暗喩を私は多少感じました。ぐでーと退屈していた娘に感想を聞いたら「うーん、でもイモ虫みたいで面白かった」。
最後の「ペンギン・カフェ」だけは事前に映像を見ていましたので、身体にすんなりと入って来ました。最初に登場するペンギンはクレジットを見るとGreat Aukとあります。これは日本語では「オオウミガラス」で、人間による乱獲が原因で19世紀半ばに絶滅した海鳥なのでした。本来はこの鳥が「ペンギン」と呼ばれていて、今で言うペンギンは姿形が似ている別の種だったのが、オオウミガラスの絶滅以降ペンギンと呼ばれるようになったそうです。ともあれ、その元祖ペンギンがウェイターをしている「ペンギン・カフェ」に掛かっている静物画(Still Life)から飛び出してくるように、絶滅危惧種の動物が次々とダンスを繰り広げます。これもクラシックバレエというよりはミュージカルのようなショーダンスですが、動物の動きがコミカルに取り入れられていて、単純に楽しめます。
「ユタ・オオツノヒツジ」のヤノウスキーはファッションモデルばりの長身でグラマラス、腰をくいっとひねる動作がいちいちコケティッシュで、セクシーな魅力が爆発していました。前回「白鳥の湖」で見たときはどうしてオカマさんだと思ってしまったんだろう。「テキサス・カンガルーネズミ」は代役の人だったようです。回りながらピョンピョン飛び跳ねて見た目より体力の要りそうな踊りですが、お疲れだったのかちょっと重たい動きでした。「フンボルト・ブタバナスカンクのノミ」は電波人間タックル(古い!)みたいなコスチュームの昆虫がチロル風民族衣装の男性5人とフォークダンスを踊りますが、振り回されて最後はフラフラになってしまいます。「ケープヤマシマウマ」は登場した瞬間からもう異様な雰囲気でインパクトがあります。おそろいのファーをまとった無表情な上流階級風レディ軍団も加わって、威厳のあるゆったりとしたパフォーマンス(もはやダンスとは言えないような)を展開しますが、最後は銃で撃たれて倒れ、レディは無表情のまま一人一人退場して行きます。DVDでショッキングだった血の痕が、今日の舞台ではありませんでした。「熱帯雨林民族」は裸族の両親と幼い娘による叙情的な踊り。子供のメイクが「呪怨」のようで怖いです。「ブラジル・ヨウモウザル」は待望のマクレー様。かぶり物なのが残念ですが、やっぱりこの人はダンスは凄いです。お猿なのでずっとピョンピョン飛んでいるのですが、ジャンプが全然ヘタらないし、終始キープしていたキレキレの躍動感が実に素晴らしい。最後は他の動物たちも加わって全員ダンスでクライマックスを迎えますが、突如として雲行きが怪しくなり、座り込んだダンサーたちがかぶり物を取ると、嵐がやって来ます。逃げ惑う動物たちがいなくなった後、最初のペンギン(オオウミガラス)だけポツンと取り残されますが、舞台後方には大きなノアの箱船が登場し、中には逃げた動物たちが座っています。乗り損ねたオオウミガラスは絶滅してしまいましたが、辛うじて生き延びた絶滅危惧種は何とか後世に残そうというメッセージが込められていますね。テーマは重いですが語り口は決してシリアスではなく、見ている最中は能天気に笑えて、見終わった後でしみじみと考えさせられる演目でした。
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